Sibeliusのココがすごい 第14回
ユーザーインタビュー 小六禮次郎氏
わたくしsibeliuskiがお送りする対談ブログシリーズ第3回。 今回ご登場いただくのは、映画やドラマ、ミュージカル、さらにはオペラなどの音楽を数多く手がける作曲家の小六禮次郎先生です。 これまで先生が手がけられた作品は枚挙に暇がありませんが、NHKの大河ドラマ『秀吉』や『功名が辻』のテーマ曲は、何の曲かは知らなくとも耳にしたことがある人はきっと多いはず。今年1月にNHKで放送されて話題を呼んだ舘ひろしさん主演の時代劇、『隠密秘帖』と『隠密八百八町』の音楽も先生のお仕事です。 そんな先生は、2003年、日本に入ってきた最初のバージョンから使われているというコアなSibeliusユーザー。多忙を極める先生ですが、仕事の合間に時間を取っていただき、いろいろなお話を伺うことができました。 それではさっそくお楽しみください! |
ファイル・サイズが小さいところに惹かれてSibeliusを使い始めた
sibeliuski | 小六先生は、コンピューターを使った譜面作成はいつ頃からやられているのですか? |
小六先生 |
始めたのは、もう15年くらい前のことですね。僕自身、コンピューターを使った譜面作成にはそれほど興味はなかったんですけど、 当時、Overtureという譜面作成ソフトを使い始めていた大先輩の先生がいらっしゃって(注:Overtureは、90年代にOpcodeというメーカーが販売していた譜面作成ソフト。現在は販売されていません)、 それで「小六ちゃん、これおもしろいよ」と薦められたのがきっかけですね。「これからの時代は、こういうものを使って譜面を書くようになるのかな・・・」とか思いながら、とりあえず使い始めてみたんですが、いざやってみるともの凄く時間がかかって(笑)。 ソフトがまだ全然洗練されていない上に、コンピューターも遅いじゃないですか。2年位我慢して使っていましたが、やはりダメで次のソフトに変えていきました。 そうそう、いま思い出しましたけど、Overtureの前にPerformerというシーケンス・ソフトを買ったこともあったんですよ。しかしあのシーケンス・ソフトというのには馴染めなかったですね。 ああいうソフトって、音符ではなく音を打ち込むという感じじゃないですか。 それが僕のような人間には凄く難しくて。表示もグラフみたいな図形ですし。 |
sibeliuski | ピアノ・ロール画面ですね。 |
小六先生 | そうそう。やっぱり僕のような人間は、譜面じゃないとダメなんですよ。だからPerformerもすぐに使うのをやめてしまいました。そこでもしシーケンス・ソフトに馴染めていたら、そのまま使い続けて、今はPro Toolsを使うようになっていたのかもしれない。 しかし残念ながら、そっちの方には行けなかった(笑)。 でも、せっかくMacを買ったので、Performer以外のソフトもいろいろ揃えたりしましたけどね。いちばんおもしろかったのは、名前は忘れてしまったけど、MIDIキーボードを弾くとリアルタイムに譜面が表示されるソフト。 ただ、それは目で見て楽しむだけで、譜面の作成には使えなかったんですけど。 |
sibeliuski | Sibeliusと出会われたのは? |
小六先生 | Overtureの後、別の譜面作成ソフトを手に入れて、しばらくはそれを使っていたんですけど、いろいろと不満があったんですよ。 一番の不満は作成されるファイルのサイズが大きいことで、僕は仕事場が北海道にもあるんですが、そこはつい最近までインターネットがISDNしかなかったところで(笑)。 だからファイルのサイズが大きいと、送受信にもの凄く時間がかかってしまっていたんですよね。フル・オーケストラのファイルだと、数MBになってしまう感じだから。それと操作が煩雑なところも不満だった。何をやるにしても一手間多く必要で、また動作も重いんですよ。 そんな感じで不満を抱きつつも使っていたんですが、あるとき東京音大の講師の方が、「Sibeliusっていうソフトがいいですよ」とおしえてくれたんですよ。それで試してみたら動作は軽いし、作成されるファイル・サイズも小さくて、すぐに気に入ってしまったんです。 それが確か2003年、バージョン2のときで、それ以降ずっとSibeliusを使っていますね。 |
sibeliuski | 別の譜面作成ソフトからすぐに移行できましたか? |
小六先生 |
ぜんぜん問題なかったですね。彼はSibeliusについて、「複雑な譜面の作成は得意じゃないですよ」とか言っていたんですけど、僕は現代音楽を書くわけではないので、その辺もまったく問題なかった。 ただ、当時のバージョンは機能も少なかったですし、いくつか不具合もありましたけどね。フォルテとかの表示がグチャグチャになっちゃうので、1つ1つ手作業で直さなければいけなかったり(笑)。 しかしフォントの表示とかが凄くきれいで、そういった不具合もあまり気にならなかったんです。もちろん、いま使っているバージョン6だと、そんな問題はないですよ。 |
小六禮次郎 ~プロフィール~
作・編曲家。東京芸術大学音楽学部作曲科卒業。
映画音楽・TV・CD・CM・舞台・イベントと幅広く多方面にわたって活躍中。主な作品に映画「ゴジラ」、大河ドラマ「功名が辻」「秀吉」、連続テレビ小説「さくら」、PS2「決戦」シリーズ、世界劇「黄金の刻」、倍賞 千恵子「冬の旅」、小林 幸子「母ちゃんのひとり言」等多数。
現在東京音楽大学映画放送音楽コース客員教授。